品川から5分、坂本龍馬ゆかりの下町・立会川をぐるりと歩く
京急本線で品川駅からわずか5分。立会川は、改札を出た瞬間から街じゅうが「坂本龍馬推し」の、ちょっと面白い駅です。若き日の龍馬が黒船に備えた砲台跡に、切ない別名を持つ橋、海沿いの花の道、そして創業70年の老舗グルメ。狭いエリアに、見どころがギュッと詰まっていました。今回はそんな立会川の街を、ふらりと歩いてきました!
駅前を流れる立会川と「ボラちゃん橋」
立会川駅は、京急本線の高架駅です。改札を出ると、「ようこそ!坂本龍馬ゆかりの地 立会川へ!」という大きな垂れ幕が出迎えてくれます。この辺りには江戸時代、土佐藩の鮫洲抱屋敷があり、若き日の龍馬が大砲の守備についていたと言われています。街はその歴史を、全力で推しているんですね。
駅を出てすぐ、高架の真下を流れる立会川に、小さな人道橋がかかっています。名前は「ボラちゃん橋」。かわいらしい名前ですが、由来はなかなかのインパクトです。2003年、東京湾から大群のボラが立会川を遡上してきて、駅前が見物人で大騒ぎになりました。その騒動が全国ニュースにもなり、橋の愛称の由来になったそうです。
実はこの立会川、かつては「死の川」と呼ばれるほど水質が悪い川でした。それを改善するため、2002年から東京駅の地下トンネルに湧き出る地下水を引いて放流しています。水がよみがえった翌年に、ボラの大群がやって来たというわけですね。橋から覗くと、川の色は今も緑がかっていますが…それでも、昔に比べればずいぶん澄んできたのだそうです。
街のシンボル「二十歳の龍馬像」
立会川の看板スポットが、坂本龍馬の銅像です。駅前の龍馬通り商店街を歩くこと1〜2分、北浜川児童遊園の一角に立っています。説明板には「立会川 二十歳の龍馬像」とありました。想像していたよりずっと大きくて、立派な銅像です。
龍馬がこの地にいたのには、理由があります。ペリーが黒船で浦賀に来航し、江戸湾の沿岸警備が一気に強化された時期のことでした。当時の龍馬は、江戸の千葉道場で剣術修行をしていた身。土佐藩が立会川に築いた砲台の警備に、19歳の龍馬が派遣されたのだそうです。
像の隣には、顔出しパネルもありました。こちらは「十九歳の龍馬」。派遣されたのが19歳、任務中に20歳になったそうです。銅像と一つ違いの年齢にしているのには、そんな由来があるのかもしれませんね。
旧東海道の歴史をたどる、涙橋と天祖・諏訪神社
龍馬像から数分歩くと、立会川にもう一つ橋がかかっています。それが「浜川橋」です。旧東海道の橋として、徳川家康の江戸入府後、1600年頃に架けられたと伝わります。今の橋は、昭和9年に架け替えられたものです。
この浜川橋には「涙橋」という別名があります。由来になったのは、江戸時代の品川にあった「鈴ヶ森刑場」です。刑場へ送られる罪人たちは、裸馬に乗せられて旧東海道を南下し、この橋を渡っていきました。その時、家族や親族がひそかに見送りに来て、橋の上でともに涙を流して別れたそうです。そこから、涙橋と呼ばれるようになりました。「立会川」という地名にも、同じような説があります。罪人を見送る、つまり「立ち会う」場所だったから、というのです。
橋を渡ってすぐの場所に、大きな鳥居が見えてきます。「天祖・諏訪神社」です。創建は平安時代末期、1100年代まで遡るとも言われる古社。もとは天祖神社と諏訪神社の二社で、昭和40年に合祀して今の形になりました。ここは「東海七福神」の一社でもあり、福の神・福禄寿が祀られています。
境内の隅には、朱色の末社・厳島神社も。こちらには弁天様が祀られていて、小さな境内になんと七福神が二柱です。下町の喧騒とは別世界の、静かな空間でした。
龍馬が黒船に備えた「浜川砲台跡」
神社から数分の新浜川公園に、もう一つ龍馬ゆかりの場所があります。龍馬が警備にあたっていた「浜川砲台」の跡です。きっかけは、1853年のペリー来航でした。「来春また来る」と告げられた幕府は、江戸湾の防備を急ぎます。近くに屋敷を構えていた土佐藩は、砲台の建設を願い出ました。そしてペリー再来航にあわせ、急いで完成させたのが浜川砲台です。
配備された大砲は8門。佐久間象山の塾で大砲の操練を学んだばかりの、二十歳の龍馬もここに加わっていたと伝わります。公園には、当時の「六貫目ホーイッスル砲」が実物大で復元されていました。小さな公園に大砲がドンと鎮座する光景は、なかなかの迫力です。龍馬像に、この砲台。立会川の街に龍馬の足跡がしっかり残っていることを実感しました。
運河沿いを彩る「しながわ花海道」
新浜川公園の隣、立会川と勝島運河の合流地点から、一本の遊歩道が始まります。「しながわ花海道」です。勝島運河の防潮堤を、地元の方たちが花壇として育てているスポット。春は菜の花、夏はひまわり、秋はコスモスと、季節ごとに違う花が楽しめるそうですよ。
広い空に運河、そして色とりどりの花。ベンチもあちこちにあって、花を眺めながら一息つける気持ちのいい道でした。そのまま進むと、鮫洲入江広場に出ます。こちらでも花壇がきれいに手入れされていて、かき氷のテントも出ていました。
創業70年超の老舗で名物「あなご天丼」
お昼に向かったのは「鈴乃家」です。鮫洲入江広場から徒歩3分ほど、旧東海道沿いに建つ、創業70年を超える老舗のお蕎麦屋さん。お目当ては、看板メニューの「あなご天丼」です。大ぶりの穴子が2本ものった豪華な一品で、ミニ蕎麦か味噌汁が選べて1,700円でした。
運ばれてきた天丼は、どんぶりから穴子の天ぷらが大胆にはみ出すほどの迫力!穴子の身はプリプリ、衣はサクッ。タレがお米まで染みた、まさに王道の味わいです。付け合わせのミニ蕎麦も、香り高い十割蕎麦でした。後から入ってきたお客さんも、ほとんどがあなご天丼を注文していましたね。
龍馬みやげも揃う、お土産散策
お腹も満たされたので、お土産を買いながら駅へ戻ります。立会川には、お土産で有名なお店が2軒あります。1軒目は「大黒屋」。暖簾にもなっている「たけのこせんべい」が看板商品です。江戸時代後期、品川や目黒のあたりは筍の名産地だったそうで、それにちなんだ筍の形のお煎餅なんですね。しながわみやげ認定品で、味の種類も豊富。せっかくなので全部の味が入ったミックスを選びました。
2軒目は「ヤマキいとう」。龍馬像の斜め向かいにある、海苔とお茶の老舗です。創業は大正13年で、もう100年を超えています。看板商品は、坂本龍馬のイラストが描かれた缶入りの「龍馬さん、潮の彩り」。8種類の味から、「しそ風味」を選びました。シソの香りがほんのり効いた味付け海苔で、ご飯のお供どころか、おやつにしたくなる美味しさでしたね。
駅の反対側でしめくくり、レトロ商店街とカフェ
ひと通り回ったあと、駅の反対側にも足を延ばしてみました。龍馬通りとは別の、「立会川西商店街」です。昼過ぎでも、ほとんどのお店は閉まったまま。スナックの看板がちらほら見えるので、夜が中心の通りなのかもしれません。年季の入ったアーケードに、昭和の商店街そのままの風情が残っていました。
散歩の締めくくりに立ち寄ったのは、駅前の「MR. HIPPO COFFEE 立会川駅前店」。2025年春にオープンしたばかりの、新しいお店です。小さな店構えに見えて、2階席もある意外と広いお店でした。落ち着いた木目調の店内で、冷えたアイスソイラテを一杯。夏のような暑さの中、体に染み渡ります。BGMも控えめで、歩き回った一日を締めくくるのにぴったりの空間でした。
まとめ:龍馬と下町情緒が詰まった、ふらり歩きにちょうどいい街
龍馬の歴史に、涙橋の切ない物語、下町の風情、そして海沿いの花畑。立会川は、狭い範囲に見どころがぎゅっと集まった、散策しやすい街でした。特に龍馬好きの方には、嬉しいはずです。銅像も砲台跡もお土産も、すべて駅の近くで回れてしまうのですから。
京急本線で品川駅から、わずか5分。次の休日に、ふらりと途中下車してみてはいかがでしょうか?
